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工藤さん

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日本の背骨が腐っていく

2011年10月号

 日本の背骨が見えなくなった。ひと昔、左翼は勢いよかったし、それを潰そうと、企業も滅茶苦茶にエネルギーを出した。右翼もそれなりに凄みがあった。どれもわかり易かったので、国民は自分なりの位置決めができた。右か左か心情左派か…と。

 いま、私たちは何をどうすればよいのかわからずに、おどおどしている。いや、何もどうにもならない隘路に追い込まれながら、怒りさえ忘れてしまっている。世界中をデモや暴動が吹き荒れる中、日本の内海は不思議に風なく波静かである。

  原発では、政府と東電から嘘八百を並べられた末、深刻な放射能被害に晒され怯えながらも、政府の無策にも東電の傍若無人にも耐え忍ぶ日本人。福島の土壌除 染を完全に行えば、貯蔵施設の建設費用は国家予算(85兆円)に迫る巨額であるという。加えて厖大な賠償費用もかかるというのに、「原発コストは安い」神 話をまだ捨てきれない、哀しい性の日本人。耐震性や垂れ流しの廃液処理の目途さえ立たない中で、恐ろしいプルサーマル稼働の動きがあっても騒ぎもせず、諦 めの境地の日本人。

 諦めといえば、官僚制の改革もそうだ。官僚制の腐敗と不都合は、広く国民の知るところとなり、国民は、官僚制の打破を民主党に託した。…が、民主党は戦いもせずに白旗を上げてしまった。愚直に戦った長妻氏だけがボコボコにされた次第。
 まだひどい。民主党の仙石、枝野ファミリーは、官僚制の悪弊と身体を張って闘ってきた、現役官僚の古賀氏が最後の頼みとした梯子を外し、古賀氏を切って捨 てた。官僚との戦いなどやる気はないヨと宣告したのだ。国の背骨を歪めている官僚制を正してほしいと願う国民の切なる思いを、民主党は踏みにじり、絶望だ けをもたらした。大罪である。なのに国民は、そんな民主党に、「国民に信を問え」と怒りもしない。
 しあわせ日本は豊かで、波静かである。「五重苦」という奇妙奇天烈な造語が流行る中、品川や東京駅中には、驚くほどの数の菓子屋が林立し、女性客で溢れかえってい
る。この光景は、世界中のどこにもない「爛熟光景」なのだろう。
 TPPに反対する半農家は、過保護策に守られ、補助金をもらった上に、出稼ぎ収入で楽々生活の地主であり、TPPのことなど、アイ・ドント・ケアだ。
 生活保護家庭は、12万円の手当と医療特待とこっそり稼ぎで、自由気ままだとも聞く。時給730円で骨身を削って12万円を稼ぐ自力貧乏人のことなど、アイ・ドント・ケアだろ
う。みんな気楽で、自分だけの世界は安泰だ。しかし、過去を喰ってる小さな幸せなぞ、国の背骨が腐ってしまえば、いずれ立ち枯れの運命だろう。
 国の背骨をしっかりするにはどうしたらよいものか。一人ひとりが自分の小さな枠からはみ出して、「お上」の駄目を駄目と糺していくしかないと思う。整然・従順は平時において日本人の美徳だが、変革期では不作為と盲従という害悪でしかない。
 民衆の血で国を変えたことのない日本。国の背骨を糺すために、世界にはいのちがけのデモや暴動が吹き荒れている中、爛熟日本では、私利私欲が錯綜するだけで、国を見渡す羅針盤なく、視界ゼロである。
 こんな日本は、絶望するしかないのだろうか。先般、自民党の親しい女性国会議員が、「百年後の日本を考えることから始め直すしかない」と言った。私もそう思う。アメリカも中国も、百年先を見据えている。
 党派の枠組みなど捨て去って、国会議員の一人ひとりに「百年の大計」を表明していただこう。大計なくば去れ…だ。背骨が見えなくなった以上、そこから初め直すしかないと思う。混乱は必至だろうが、このまま腐っていくより、手ごたえの可能性に向かう方が救われるから。混乱しても、日本は破裂もせず、必ずほどほどにおさまるから…【工藤】


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